FXや暗号資産FXの世界に足を踏み入れたばかり、あるいはこれからショート取引を始めようとしているあなたは、「ショートって、なんかロングより不利じゃない?」と感じたことはありませんか?特に、具体的な利益計算をしてみると、「ロングは大きく儲かりそうだけど、ショートはどうも利益が伸び悩むような…」という疑問を抱く方も少なくありません。
しかし、結論からお伝えしましょう。FXや暗号資産FXのショート取引は、決してロング取引より不利なわけではありません。もしそう感じているなら、それは損益計算におけるいくつかの誤解が原因かもしれません。
この記事では、「FX/暗号資産FXのショートは不利なのでは?」というあなたの疑問に対し、その原因となる誤解を徹底的に解き明かし、正しい損益計算の考え方を具体的な例を交えながら解説していきます。この記事を読めば、下落相場でも自信を持って利益を狙えるようになるでしょう。
「FX/暗号資産FXのショートは不利」と感じる、その理由と誤解のポイント
なぜ多くのトレーダーが「FX/暗号資産FXのショートは不利だ」と感じてしまうのでしょうか?そこには、直感的な感覚と、実際の金融商品の仕組みとの間にギャップがあるからです。ここでは、その主な理由と誤解のポイントを詳しく見ていきましょう。
多くの人が抱く「値幅」と「パーセンテージ」の混同
最もよくある誤解の一つが、価格の「絶対的な値幅」と「パーセンテージでの変化」を混同してしまうことです。
例えば、ビットコイン(BTC)が100万円から500万円に上昇した場合、その値幅は400万円です。この時、ロングで1BTCを持っていれば400万円の利益となります。
一方で、BTCが500万円から100万円に下落した場合、同じく値幅は400万円です。ショートで同じ1BTCを取引していれば、こちらも400万円の利益になります。
【ここでよくある疑問】 「でも、ロングは100万円から500万円で5倍(+400%)になったのに、ショートは500万円から100万円で5分の1(-80%)にしかならない。なんだかショートの方が伸びが悪い気がする…」
この感覚がまさに「値幅」と「パーセンテージ」の混同です。価格の「絶対値」で400万円の利益を得るために必要な「パーセンテージの変化」が、スタート地点の価格によって異なるため、直感的に「不利」と感じてしまうのです。
しかし、FXや暗号資産FXの損益は、基本的に「購入(売却)した価格」と「決済した価格」の「差額」に「取引数量」を掛け合わせたものです。この「値幅」という観点で見れば、ロングもショートも公平であることに変わりありません。
ユーザーが陥りやすい「投資資金」と「取引数量」の錯覚
次に、「同じ投資資金なのに、ショートの方が利益が少ない気がする」という錯覚です。これもまた、非常に多くの方が陥りやすいポイントです。
【あなたの疑問を再現してみましょう】 「もしBTCが100万円の時に1BTCをロングしていれば、500万円になったら400万円の利益。でも、BTCが500万円の時にショートしようとして、仮に『100万円分のショート』をしたら、100万円まで下がっても多分180万円にしかならない気がする。同じ資金で同じ値幅を取ってるのに差が出るのはなぜ?」
この計算例には、いくつかの誤解が含まれています。
「100万円分のショート」の解釈: BTCが500万円の時、「100万円分のショート」というのは、0.2BTCをショートすることを意味します(100万円 ÷ 500万円/BTC = 0.2BTC)。 この0.2BTCを500万円でショートし、100万円で買い戻した場合:
- 売却額:0.2 BTC × 500万円/BTC = 100万円
- 買戻額:0.2 BTC × 100万円/BTC = 20万円
- 利益:100万円 – 20万円 = 80万円 確かに80万円の利益であり、ロングの400万円と比較すると「少ない」と感じるでしょう。しかし、これは取引数量が異なるために生じる結果です。ロングでは1BTC取引し、ショートでは0.2BTCしか取引していないのですから、利益額が異なるのは当然です。
「同じ資金」の定義のずれ: もしあなたが「同じ資金」で「同じ数量」を取引した場合、利益額は全く同じになります。 例えば、1BTCを500万円でショートし、100万円で買い戻した場合:
- 売却額:1 BTC × 500万円/BTC = 500万円
- 買戻額:1 BTC × 100万円/BTC = 100万円
- 利益:500万円 – 100万円 = 400万円 このように、同じ1BTCという取引数量であれば、ロングと同じ400万円の利益が得られます。 ここでのポイントは、FXや暗号資産FXのレバレッジ取引において、あなたが投入する「証拠金」は、あくまでポジションを維持するための担保であり、実際に取引される「数量」とは区別して考える必要があるということです。投入できる最大数量は、価格水準とレバレッジによって変動します。
ロングの「無限の可能性」とショートの「0までの上限」という非対称性
もう一つ、ショートが不利だと感じさせる要因として、価格変動の「理論上の上限」が挙げられます。
- ロング: 価格は理論上、無限に上昇する可能性があります。つまり、最大利益も理論上は無限大です。
- ショート: 価格は0までしか下落しません。そのため、ショートの最大利益は、売却時の価格まで、という上限があります。
この「理論上の最大利益」における非対称性が、「ショートは不利」という感覚を生み出すことがあります。しかし、これはあくまで極端なケースにおける「最大利益」の話であり、実際の短期・中期のトレーディングにおいて、この非対称性が直接的に損益の「パーセンテージ」に影響を与えることはほとんどありません。
市場の動向を見極め、適切なリスク管理のもとで取引する限り、ロングもショートも同じように利益機会を提供してくれます。
ショートは不利じゃない!正しい損益計算の考え方
これまでの誤解を解消した上で、FXや暗号資産FXにおけるショート取引の正しい損益計算方法と、ロングとの本質的な対称性について詳しく見ていきましょう。
【実践例で解説】同じ「取引数量」なら利益は同じ!
あなたの抱える疑問を解決する最も重要な鍵は、「同じ取引数量で比較すること」です。
FXや暗号資産FXの損益は、以下のシンプルな公式で計算されます。
損益 = (決済価格 − ポジション価格) × 取引数量
この公式をロングとショートに当てはめてみましょう。
ロングの場合(買いから入る):
- あなたがBTCを100万円で1BTC購入(ロング)し、500万円で決済(売却)した場合: (500万円 – 100万円) × 1 BTC = 400万円の利益
ショートの場合(売りから入る):
- あなたがBTCを500万円で1BTC売却(ショート)し、100万円で決済(買い戻し)した場合: (500万円 – 100万円) × 1 BTC = 400万円の利益 注: ショートの場合は「ポジション価格 − 決済価格」または「−(決済価格 − ポジション価格)」で利益を計算します。価格が下がれば(ポジション価格 > 決済価格)利益となります。
ご覧の通り、取引数量が同じであれば、価格変動の「値幅(絶対値)」が同じ場合、ロングでもショートでも得られる利益額は全く同じです。
これは「シーソーゲーム」に例えられます。シーソーの片側にロング、もう片側にショートが座っていると想像してください。価格が上がればロングが上がり、ショートは下がります。価格が下がればショートが上がり、ロングは下がります。シーソーの「傾き」という点で、両者は常にバランスが保たれているのです。
大切なのは「パーセンテージ変化」と「レバレッジ」の理解
絶対的な利益額だけでなく、投資額に対する利益率、つまり「パーセンテージ変化」で物事を評価することも重要です。
「例え話:身長の成長率」 身長100cmの子供が200cmに伸びて「100%成長」したとします(値幅は100cm)。一方、身長200cmの大人が300cmに伸びても「50%成長」です(値幅は同じく100cm)。絶対値ではどちらも100cm伸びましたが、成長率で見れば子供の方が大きく成長しています。
この例えのように、価格のスタート地点が異なれば、同じ値幅でもパーセンテージでの変化率は異なります。しかし、これは「ショートが不利」なのではなく、「価格の相対的な変化」という物理的な法則に過ぎません。
FXや暗号資産FXのレバレッジ取引では、少額の証拠金で大きな取引数量を動かせます。この「取引数量」を基準に損益を考えることが、誤解を解消する上で最も大切です。
FX/暗号資産FXにおける損益計算式の基本
FXや暗号資産FXの損益は、基本的に以下のシンプルな公式で計算されます。
利益/損失 = (決済価格 – ポジション価格) × 取引数量 ± スワップポイント(FX)/ファンディングレート(暗号資産FX)
- ロング(買い)の場合: ポジション価格より決済価格が高ければ利益、低ければ損失。
- ショート(売り)の場合: ポジション価格より決済価格が低ければ利益、高ければ損失。
この計算式を見てもわかる通り、ショートが特別に不利になるような要素は含まれていません。スワップポイントやファンディングレートは別途考慮する必要がありますが、これらもロング・ショート両方に発生する可能性があり、一方だけが常に不利になるわけではありません。
なぜ「FX/暗号資産FXのショートが不利」ではないと言えるのか?
「同じ数量で比較すれば同じ利益」というのは理解できたけれど、それでもまだどこか釈然としない…という方もいるかもしれません。ここでは、さらに踏み込んで、ショートが不利ではない理由を多角的に解説します。
市場の公平性:ロングもショートも「変動率」という観点では対称
金融市場は基本的に「変動率」という観点では公平にできています。価格が10%上がれば、ロングで利益が出ます。価格が10%下がれば、ショートで利益が出ます。どちらか一方の方向性だけが特別に「儲けやすい」ということはありません。
重要なのは、市場の方向性を正しく予測し、その方向に合わせて取引することです。市場の状況は常に変化し、上昇相場もあれば下落相場もあります。時にはレンジ相場(一定の価格帯を行き来する相場)もあります。
ロングだけしかできないと、市場の上昇局面でしか利益を狙えません。しかし、ショートを理解し活用することで、市場の下落局面でも積極的に利益を追求できる可能性が広がるのです。これは、トレーダーにとって非常に大きな武器となります。
価格水準による「最大取引数量」の違い
ユーザーの「同じ資金で同じ値幅を取ってるのに差が出る」という疑問の背景には、「同じ資金(証拠金)で投入できる最大数量が、価格水準によって異なる」という現実があります。
例えば、あなたが100万円の証拠金を持っているとします。
BTCが100万円の時(安値)にロングする場合: レバレッジが20倍だとすると、100万円 × 20 = 2000万円分の取引が可能です。1BTCが100万円なので、最大20BTCまでロングできます。
BTCが500万円の時(高値)にショートする場合: 同じ20倍のレバレッジでも、100万円 × 20 = 2000万円分の取引が可能です。しかし、1BTCが500万円なので、最大4BTCまでしかショートできません(2000万円 ÷ 500万円/BTC = 4BTC)。
このように、同じ証拠金で取引できる最大数量は、原資産の価格水準によって変わります。高値では同じ証拠金でも取引できる数量が少なくなるため、同じ値幅が動いても、得られる絶対的な利益額が少なくなるように感じるのです。
しかし、これは「ショートが不利」なのではなく、「高いものを買う(売る)には、より多くの資金(証拠金)が必要になる」という、ごく自然な経済原理に過ぎません。
リスク管理と資金効率の視点
ショート取引は、レバレッジをかけた場合、損失が無限大になるリスクがあるという指摘もあります(理論上、価格は無限に上昇する可能性があるため)。確かに、このリスクは考慮すべき重要なポイントです。
しかし、これも適切に損切り(ストップロス)を設定することでコントロール可能です。プロのトレーダーは、どんな取引においても、まず「いくらまでなら損失を許容できるか」を明確にしてから取引に臨みます。このリスク管理を徹底すれば、ショートが特別に危険な取引になるわけではありません。
むしろ、ショート取引を戦略的に活用することで、以下のようなメリットがあります。
- リスクヘッジ: ポートフォリオに持っているロングポジションの価格下落リスクを、ショートで相殺する(ヘッジする)ことができます。
- 資金効率の向上: 上昇相場だけでなく、下落相場でも利益を狙えるようになるため、市場のどんな局面でも資金を効率的に活用し、収益機会を最大化できます。
ショート取引を味方につける戦略とメリット
ショート取引は「不利」どころか、正しく理解し活用すれば、あなたのトレーディング戦略を格段に広げる強力な武器となります。ここでは、ショート取引がもたらす具体的なメリットと戦略を見ていきましょう。
下落相場での収益機会を逃さない
最も直接的なメリットは、市場が下落する局面で利益を得られることです。株や仮想通貨の市場は常に右肩上がりというわけではありません。時には大きな調整局面や暴落に見舞われることもあります。
ロングポジションしか持っていないと、こうした下落相場では含み損を抱えるか、損失を確定させるしかありません。しかし、ショート取引を理解していれば、市場が下落する動きそのものを収益機会に変えることができます。
例えば、企業の決算発表が悪く株価が暴落しそうな時や、仮想通貨市場全体が冷え込みそうな時にショートポジションを持つことで、多くの投資家が損失を出す中で、あなたは利益を上げることが可能になります。
ポートフォリオのリスクヘッジとしての活用
ショート取引は、リスクヘッジの手段としても非常に有効です。もしあなたが長期的な視点で現物資産(株式や仮想通貨など)を保有している場合、一時的な市場の下落はポートフォリオ全体に大きなダメージを与えかねません。
このような状況で、保有している現物資産の一部をショートすることで、価格が下落した場合に発生する損失を、ショートポジションの利益で相殺することができます。これは、いわば「保険」のような役割を果たし、市場の変動からあなたの資産を守る強力な手段となります。
ボラティリティを活用した多様な戦略
市場の価格変動(ボラティリティ)は、ロングとショートの両方に利益機会をもたらします。特に、短期的な値動きが大きいボラティリティの高い相場では、ショート取引が有効な戦略となり得ます。
- レンジ相場での活用: 価格が一定の範囲内を行き来するレンジ相場では、上限に達した際にショート、下限に達した際にロングという形で、両方向から利益を狙うことができます。
- ブレイクアウト狙い: 重要なサポートライン(下値支持線)を割り込んだ際に、その後の下落トレンドをショートで狙う戦略も有効です。
ショート取引は、単に価格が下がると予測するだけでなく、市場の様々な動きを読み解き、それに応じた戦略を構築する上で不可欠な要素と言えるでしょう。
まとめ:ショートの誤解を解き、賢いトレーダーへ
「FX/暗号資産FXのショートって不利なの?」というあなたの疑問は、価格の「値幅」と「パーセンテージ」、そして「投資資金」と「取引数量」の混同から生まれるものでした。
この記事で解説したポイントをまとめると、以下のようになります。
- ショート取引は決して不利ではない。同じ「取引数量」を取引する限り、価格変動の「値幅(絶対値)」が同じであれば、ロングもショートも得られる利益額は同じです。
- 「不利」と感じるのは、異なる取引数量や異なるパーセンテージ変化を直感的に比較してしまう誤解が原因です。
- 市場は「変動率」という観点では公平であり、ロングもショートも同じように利益機会を提供します。
- ショートは、下落相場での収益機会や、ポートフォリオのリスクヘッジとして活用できる強力なツールです。
FXや暗号資産FXで成功するためには、市場の二面性である「上昇」と「下落」の両方を理解し、活用できる能力が不可欠です。ショート取引への誤解を解消し、その本質とメリットを正しく理解することで、あなたはより冷静で合理的な投資判断ができるようになり、どんな市場環境でも利益を追求できる「賢いトレーダー」へと成長できるでしょう。
今日から、ショート取引をあなたの戦略の一つとして、自信を持って市場に臨んでみませんか?まずは少額からでも、ショート取引の仕組みを実際に体験してみることをおすすめします。新たな視点と収益機会が、きっとあなたのトレーディングをさらに豊かなものにしてくれるはずです。
